夏至を過ぎると太陽が少しずつ遠くなっていく。ドイツの四季は暦通りだ。だから夏至と冬至を意識することで季節の彩りを感じるのが楽しくなる。私の中でも特に11月は一番辛い時期だ。世界から色が失われる。12月の方がくらい時間は長いのだが、クリスマスが近づくとイベントが多くなるので気が紛れる。しかし11月はただただ日が短くなっていく毎日なのだ。8月の中旬を過ぎると空気が少しずつ秋になっていく。今までは燦々とした緑と青だった太陽の光が、少しずつ黄色味を帯びていく。その変化は微々たるものだ。だから毎日暖かい気温と青空に囲まれているとなんだかこの気持ちの良い季節が永遠と続きそうに思える。しかし太陽は着実に次の季節の準備を始めているのだ。
ドイツの学校行事や会社の休暇の時期を見ると、それなりに理にかなった設定になっている。これは私が勝手に思うことだが、やはり8月から9月に新学期が始まり、秋と冬の間は室内でじっと学ぶことに適していると思う。そう考えるとバカンスが始まる6、7、8月はなかなか室内でじっとしていようという気持ちにはならない。空が少しずつ彩りを取り戻し、太陽が燦々と輝いているのに室内にこもることがとてももったいなく感じてしまうのだ。1年の間の約半分くらい太陽から遠ざかってしまうことを考えると、外への憧れが本能的に強くなる。ヨーロッパの画家たちが東南アジアやアフリカなどの暖かい国の彩りに心を奪われてしまうのは、暗くて彩りが奪われてしまう冬の時期を体験しているからだ。私だって冬になるとバリやカリブ海やアフリカへの憧れが強くなり、ネットで航空券を調べたりしてしまう。
8月になると、少しずつ冬のことを考え始める。気がはやいかもしれないが、暗くて寒くて色が失われた世界で生きていくには、室内で快適に過ごすために色々と習い事を始めてみたり、何をしようかと考えておいて損はないのだ。