ドイツ人の夫と結婚したのが2016年の4月。それまで7年近くベルリンで同棲をしていた。夫と出会ったのは言うまでもなく、私がベルリンへ移住したからだ。
ドイツで暮らした10年間は夫と一緒に暮らした年数と一緒だ。何ヶ月かお互いに仕事で離れたことは数度あった。それでも帰ってくる場所はいつも夫と同じだ。
時々、一人でご飯を食べていると夫とは価値観が違うよなと感じる。食事の面では特に好きなものが一致しにくい。私が食べたいものは、和食なのだが夫が食べたいものはドイツ料理だ。家で一人で白米に味噌汁と適当な副菜を食べながら、日本の動画を見ているとこの細やかな幸せを夫と共有することはこの先も無いのだろうと思う。日本の動画は日本人が見るように作られているので、日本人が面白いと思うものはドイツ人も面白いとは限らないのだ。夫は日本語ができないから余計にだ。
それでもドイツ人夫が日本語ができなくても楽しめる番組はいくつかある。日本に帰った時にはイッテQが毎週楽しみだった。イモトの変な眉毛と世界中を旅して面白いものを芸人さんが面白く紹介する構成は言葉がわからない人にも印象深く残るし番組自体も楽しめる。日本の芸人さんは、言葉やギャグが面白いだけじゃなく体を使った表現がうまいので言葉が通じなくてもいくらか笑えるところがすごい。うちはドイツでもほとんどテレビを見ることがないので、日本に帰ってもテレビを見ることはあまりない。それでもうちのドイツ人夫が好きな日本人は誰?と聞くと、夫はイモトと答える。イモトの面白さ、アスリート並みの企画を達成する根性などは夫は何度も感動した。たかがイッテQだが、あなどれない。あとはQチューブという企画もなかなか笑ってくれている。
私は夫に何度も日本語を習えと言う。それは日本の私の家族とコミュニケーションが取れないだけじゃなく、日本にルーツを持つ私のことをもっと理解するためだ。家族なんかと一緒にいる時に、そういえば私って昔学校でこんなことしたよね、とか子供の頃はこうだったとか、そういう小さなヒントは日常の会話に隠れているのだ。そうやって人間同士を理解していく。私はドイツ語ができるので、夫の過去を人伝に知ることができるが私の夫はそれができない。国際結婚は、色々な形があるし10年も暮らしてしまえば多少のことは気にならなくなるが、時々私はこの夫と一緒になったことで色々と失ったものも多いよなと感じることもある。それをネガティブに捉えるか、ポジティブに捉えるかはまた別問題として。